弁理士が教える日本規格協会とは?規格開発のトータルサポートを担う

鉱工業品をはじめとした製造業にとどまらず、近年では法改正によりデータ・サービス分野も規格の対象となったJIS(日本産業規格/Japanese Industrial Standards)。

JISをはじめ、国内における標準化の重要度がますます高まりを見せ、企業全体でグローバル化を視野に入れた動きも活発化しています。そうした国内外の標準化をさらに促進させていくため、さまざまな規格開発を担っているのが一般財団法人「日本規格協会」です。

当サイト監修者:日本知財標準事務所 所長 弁理士 齋藤 拓也 1990年株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、金融・産業・科学技術計算システム開発に従事、2003年正林国際特許商標事務所に入所。17年間で250社以上のスタートアップ・中小企業の知財活用によるバリューアップ支援を経験。現在は、大企業の新規事業開発サポートや海外企業とのクロスボーダー 案件を含む特許ライセンス・売買等特許活用業務等に携わる。

協会の歴史

「日本規格協会」の設立は、戦後間もない1945年12月6日。大日本航空技術協会と日本能率協会という二つの協会の規格担当部門が合併し、誕生しました。翌年には雑誌『規格ト標準』を創刊。国内外の標準化にまつわる最新情報を発信するようになりました。

そして1950年にJIS規格票の発行および頒布を開始し、翌1951年にはJISの原案作成を始めます。以後、標準化講習会や標準化全国大会の開催、JIS登録認証機関協議会(略称:JISCBA)の設立など精力的に活動し、2006年には国際標準化100年記念事業にも共催団体として名を連ねました。

一般財団法人に移行したのは2012年。2015年には創立70周年を迎え、2019年にはさらなるグローバル化の促進を図るべく日本規格協会グループを設立し、グループ一丸となって標準化におけるトータルソリューションを提供し続けています。

事業内容

Jigyō naiyō

「日本規格協会」の主な事業は、標準化の普及と規格の開発。関連団体との連携を深めながら、標準化において根幹から枝葉まで重要な役割を担っています。

標準化の普及事業で提供されているのは、セミナーや説明会の主催、品質管理検定の実施など。規格の開発事業については、以下で詳細を解説します。

原案作成、提案のサポート

協会ではJIS原案作成公募制度(略称:JIS公募)を実施しています。JIS公募の目的は、民間団体が自主的にJIS原案作成を行なう動きを支援することです。協会が民間団体に協力することにより、規格票の様式および作成方法に則った正式な方法で、質の高いJIS原案を作成することが狙いです。

JIS公募を介して作成されたJIS原案は、特定標準化機関制度(略称:CSB)を利用した申出原案として扱われ、日本産業標準調査会(略称:JISC)での審議が迅速に進むとされています。

また、国際規格を基礎とした原案を作成する際には、当該国際規格の仮翻訳を協会が提供しています。こうした規格の作り方や記入の仕方、提案などの工程はもちろん、必要となる手続きや関連書類の作成方法なども相談可能です。

JIS公募はこれまで年3回実施されてきましたが、より多くの原案作成・提案を柔軟にサポートするべく、2020年度より年4回の実施へと変更されました。

規格の維持管理

JISの見直し調査を実施しています。この調査は経済産業省からの委託を受けたものです。

原則的に、JISは制定・確認・改正のいずれかを行なった日から遅くとも5年が経過するまでに内容を見直し、JISCによる審議を受けなければならないことが産業標準化法で定められています。今年度に実施される見直し調査は、来年度に見直し期限が到来するJISが中心です。

協会では標準化の関連団体に対し、見直し調査結果を協会に向けて報告するよう呼びかけています。具体的な調査事項は、技術面や社会的環境、当該JISに対応する国際規格の状況などから見直しを行ない、改正・廃止・確認のうち、いずれかの対応が適切であるかを判断することです。

協会が報告を受けた調査結果は主務大臣および経済産業省へ提出され、JISCで審議にかけられます。審議の前には、調査結果についての照会やヒアリングなどの検討作業が必要に応じて実施されます。

標準化における新市場創造の推進

自治体や産業振興機関、地域の金融機関、大学や公的研究機関などと「パートナー機関」として連携した標準化活用支援パートナーシップ制度を実施しています。この制度の目的は、産官学さまざまな団体と協力し合い、国内外を問わずすぐれた技術・製品・サービスなどにおける新市場の創造を支援することです。

また、標準化アドバイザーとしてこれまでに培ってきた知見や正式なルールなどを民間団体へ幅広く提供しています。

昨今ではビジネスツールとして標準化を活用する手段が認識されてきましたが、具体的な知識に乏しく二の足を踏んでいる企業なども多いことでしょう。

協会では標準化アドバイザーによる面談サービスも実施しており、いざ標準化を取り入れるにあたって必要となる作業負担やプロセスなどをアドバイスしたり、個別に不安を解消したり、幅広く支援を行なっています。

▶︎標準化のメリット・デメリットについてはこちら

民間規格の開発および発行

独自の民間規格であるJSA規格の開発・発行を行なっています。近年、規格開発に対するニーズは国内外を問わず高まり続けており、民間団体は従来の在り方に囚われない規格を模索しています。

JSA規格はこうした背景を踏まえ、透明性や公平性、客観性などの視点を確保した民間企画として2017年6月に創設されました。

「日本規格協会」は日本におけるナショナルセンターとしての位置づけにあり、標準化の開発や普及・啓蒙活動といった取り組みを行なうなかで、JSA規格は企業などから協会に寄せられた要望を受けて生まれた規格なのです。

現在、従業員満足志向に基づいた組織経営の指針や、エクセレントサービスの実現に向けた規格開発の指針、コールドチェーン物流サービスに関する要求事項など、サービス分野を中心に多彩な規格が発行されています。

国際規格の開発支援

さらに、ISO(国際標準化機構/International Organization for Standardization)やIEC(国際電気標準会議 /International Electrotechnical Commission)といった、国際規格にかかわるトータルサポートソリューションも実施。

国際規格におけるニーズ拡大および国際基準化において我が国の影響力を高めていくことを目的に、原案作成・提案、人的支援、人材開発、多国間・二国間での標準化協力など、精力的に支援しています。

▶︎国際標準化ISOについて詳しくはこちら

JIS登録認証機関協議会の取り組み

JIS

「日本規格協会」のJIS認証制度支援室内に設けられた「JIS登録認証機関協議会(略称:JISCBA)」。新JISマークの制定に伴い、2005年に設立された協議会です。

JISCBA設立の目的は、JISマーク表示制度における信頼性や公平性・統一性の確保と、JISの普及および発展に貢献すること。JISマークの認証作業を担っている登録認証機関が相互に理念を共有したり連携したりすることで、この目的を果たそうという思いが込められています。

▶︎JISマークについて詳しくはこちら

信頼性回復のための取り組み

この資料は、非鉄金属分野において大手メーカーによる品質管理データの改ざん問題が多発したことを受け、運用方法の見直しを開示したものです。

品質管理データの改ざん事例として代表的なものに

2000年・2004年の三菱自動車(リーコル案件の放置・隠蔽)
2017年の日産自動車(無資格者による法定検査の実施・隠蔽)
同じく2017年の神戸製鋼(鋼材性能データ偽装)

などがあげられます。一連の不正発覚事件により、多数のJISマーク認証取り消しも発生しています。

これを受け、JIS法では未認証でJISマークを表示した法人等に対する罰則として、罰金刑の上限額が1億円まで引きあげられました。(改正前の上限額は100万円)

前述の資料はこれらの事例と共に不正発生の背景が分析され、品質管理の本質が追求されたものとなっています。具体的には、統計データの重要性や人材の有効活用などが訴えられていました。そして、品質管理のあるべき姿を体現することで不良品が生まれないプロセスをつくりだし、生産率の向上が可能となることが示されています。不正事例ごとに原因を究明し、是正概要が記された明快な内容です。

2017年の事例としてあげた神戸製鋼は、不正発覚後に品質管理体制の再構築に取り組み、2020年3月にすべてのJIS認証を復活させています。

ISOにおいて、ISO9000シリーズの制定の契機にもなったと言われている日本企業の高品質を支えてきた品質管理が、これほどの問題になったことは各界に衝撃を与えました。

一方で、本来日本人が得意とする改善活動の本質を活かし、優れた素材やキーパーツを生み出す能力が完全に失われてしまったわけではありません。

そこで、再び世界市場で「日本品質」を訴求して日本企業が再び輝きを取り戻すために残された時間はそう多くはない中で、日本の規格開発のナショナル・センターとして、日本規格協会が果たすべき使命は大変に大きなものがある、といえるでしょう。

まとめ

我が国の標準化関連団体のなかでも、幅広い役割を担うことで数多くの民間団体をサポートする「日本規格協会」。今後ますますグローバル化が進行していくなかで、同協会の存在感はよりいっそう増していくといえるでしょう。


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