【弁理士監修】DIN規格とは?概要や標準化戦略との関係について詳しく解説

みなさんはDIN規格についてご存じでしょうか?車をお持ちの方は、「DIN」が含まれる商品名のカーナビやオーディオを見かけたことがあるかもしれません。では一体この単語はどのような意味を持っているのでしょうか?

今回はDINについて知っておきたいことや実例、さらには標準化に向けた取り組みまでじっくりと解説します。

当サイト監修者:日本知財標準事務所 所長 弁理士 齋藤 拓也 1990年株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、金融・産業・科学技術計算システム開発に従事、2003年正林国際特許商標事務所に入所。17年間で250社以上のスタートアップ・中小企業の知財活用によるバリューアップ支援を経験。現在は、大企業の新規事業開発サポートや海外企業とのクロスボーダー 案件を含む特許ライセンス・売買等特許活用業務等に携わる。

DIN規格とは

DINは「ドイツ工業規格 Deutsche Industrie-Norm(en)」の略称です。これはドイツ規格協会(Deutsches Institut für Normung)が制定し、ドイツ連邦共和国が定めた国家規格です。日本では「DIN規格」の呼称が一般的です。

DIN規格はドイツ版のJIS

DIN規格は日本のJIS (Japan Industrial Standard 日本産業規格) に相当するもので、ドイツだけでなく国際的に適用されています。電気配線、フィルム感度、紙のサイズなどの規格がよく知られています。

▶︎JIS(日本産業規格)について詳しくはこちら

こちらは世界各国の代表的な国家規格です。

国内規格と国際規格

国家を超え、地域・国際レベルで制定されている規格には次のようなものがあります。中でも有名なのは国際規格ISOでしょう。

▶︎国際標準化ISOについて詳しくはこちら

ところで、DIN規格の規格番号は「DIN XXXXX(番号):20XX-XX(発行年‐月)」のような形式で表されます。また規格番号の間に「EN」や「ISO」などの文言が記載されることもあります。これは既存の欧州規格や国際規格がDINでも登録されたことを示しています。

DIN規格の用例

私たちの生活にはDIN規格に則った製品が意外と多く関係しています。ここでは我が国でも使われているDIN規格についてまとめました。

カーナビやカーオーディオを設置するスペースの大きさはDINで表されます。サイズはドイツのカーラジオの設計を基にしています。あらゆる国の自動車メーカーがDIN規格に則って車を製造しているのです。

  • 1DIN:横幅180mm×高さ50mm モニターはないが音楽やラジオを再生することができる
  • 2DIN:横幅180mm×高さ100mm 一般的なカーナビのサイズ

機械部品

普段あまり目にしませんが、DIN規格は身近な機械にも幅広く採用されています。

【コネクタ】

DIN connector

電線同士あるいは電線と電気器具を接続する部品がコネクタです。直径13.2mmのDINコネクタ、直径9.5mmのミニDINコネクタがあり、キーボードをはじめとする様々な機器に使用されています。

【レール】

レール

レールは物を円滑に動かすために取り付ける棒状の鋼材で、カーテンレールなどでもおなじみです。なかでも、制御盤の内側に装置を取り付ける際に使われるアルミ製のレールをDINレールと呼びます。幅が35mmに統一されていて、なおかつネジを用いずに取り付けられるため着脱や点検の手間を省くことができます。

【フランジ】

フランジ

フランジとはパイプ同士、またはパイプと機械部品を接続する際に用いられる鍔(つば)状の部品です。付け外しが容易であるにもかかわらず高い密閉度で結合できるという特徴があります。

配管の中を流れる液体の圧力や温度ごとにグループ分けされてて、それぞれについてサイズやボルト穴の個数等の規格が定められています。日本ではJISやJPI(公益社団法人石油学会)の規格に基づくフランジが多く使われていますが、DIN規格仕様に基づいた製品もたくさん出回っています。

【油圧ホース】

油圧ホース

密閉した部分に油を満たし、その油を仲介にして圧力を他に伝える装置を油圧器といいますが、その機器の中で油の経路を作るのが油圧ホースです。主としてショベルカーやパワーショベルのような建設機械に使われています。現在、国内で利用されている油圧ホースの大半が国外で製造されており、DIN規格に沿った製品も多く出回っています。

2-3. 水質

プール

DIN規格には水質の基準もあります。プールや浴場などの水質に関して世界で最も厳格な基準を制定しているのがDIN19643です。

この基準では、厚生労働省基準では記載のない緑膿菌やレジオネラ菌、水の透明度などの値を定めています。日本では東西化学産業株式会社がDIN規格もクリアしたプール水を提供しています。
(参考)東西化学産業株式会社HP

DIN規格と標準化

ここまでの解説で、DIN規格が私たちにとっても密な存在であることがお分かりいただけたかと思います。

さらにDIN規格を定める工程には、先進的なアイデアが詰まっています。今後の我が国における標準化のビジョンを描くうえでも有益となることが多いでしょう。ここからは標準化に向けたドイツの取り組み、そして今後の展望を詳しく掘り下げていきます。

ドイツの標準化戦略

ドイツは国家ぐるみで標準化に取り組んでいることが知られています。ドイツの標準化戦略を推進するドイツ規格協会(DIN)は、「標準化で未来を形づくろう!」というスローガンを掲げ、標準化を通じたビジネスや社会の強化、発展、開放を自らの使命としています。また、それを達成するために以下の7つの具体的な目標を設定しています。

(図)DINが掲げる7つのゴール

参考:https://www.din.de/en/about-standards/din-standards

DINが優れているのはこうしたビジョンの明確さだけではありません。DINの最大の特徴は、規格の制定に誰でも関与できることです。地位や役職を問わずあらゆる人々が規格を立案できます。

したがって、企業だけでなく研究機関や公的機関、さらに消費者でさえも提案者になれるのです。
さらに候補として支持された案は、規格草案ポータルというサイトに無料で公開されます。

この草案には誰でもコメントを付けることができ、それらの意見は規格委員会で協議され、規格となります。DIN規格は制定においてあらゆる人に門戸を開いているのです。

加えて、DINはドイツのほかにも欧州、そして世界基準の規格を産み出しています。規格案は最初に国内、ヨーロッパ、世界のどの領域で成立させるのかが検討されます。熟考の末、DINではなくENやISOなどの広範囲を対象とした規格に昇格するケースも十分ありえるのです。

これを可能にするのはDINが各所に派遣しているスタッフです。DINの規格協会はCENやISOといった地域・国際規模の標準化機関へそれぞれ専門家を送り込んでいます。

こうした国際的な機関での活動が、標準化においてドイツの強力な立場を示す理由となっています。結論として、規格を定める際に裁量を大きく持てる可能性が高まり、国内規格が世界で認められ国際規格として取り入れられやすくなるのです。

そして、国内規格が国家を超えて欧州や世界を対象とした上位規格に昇格することが、ひいては規格作りに携わった人々や企業の活動および意思決定の範囲を拡大することに結びつきます。標準化の国際的な重要性をドイツは国家レベルで認識しています。

最近の動向

近年、ドイツはさらなる標準化戦略を打ち出しています。2011年、ドイツ政府は“Industrie 4.0”という計画を発表しました。日本語に訳すと「第4次産業革命」という意味で、製造業のデジタル化を最大の目標としています。

中心となるのはインターネットで情報管理や作業の最適化を図る「スマート工場」の構築です。あらゆるものをインターネットでつなげることで生産体制がより効率的になることが期待されています。

ここでのキーワードもやはり「標準化」です。 この計画の拠り所である「ドイツ標準化ロードマップ」には、“Industrie 4.0”に関する標準化の概要が記載されています。

ドイツではこうした国家プロジェクトを推進する際にも、まず標準化戦略を最重要事項として考えているのです。この目論見の支柱となる「ドイツ標準化ロードマップ」には、“Industrie 4.0”に関する標準化の概要が記載されています。ドイツではこうした国家プロジェクトを推進する際にも、標準化戦略が最も重要な位置付けであると捉えられているのです。

▶︎標準化の専門家が教える知らないと損する話はこちら

まとめ:DIN規格から見える標準化の未来DIN規格から浮かび上がる標準化の展望

DIN規格の基礎知識からドイツの最新の標準化戦略まで、盛りだくさんの内容でお届けしてきました。DIN規格が日本をはじめ世界中で広く使われている理由がお分かりいただけたかと思います。

DIN規格の概要からドイツの標準化における最新戦略まで、盛りだくさんの内容でお届けしてきました。DIN規格が世界のあらゆる国々で支持されている理由がお分かりいただけたかと思います。

特筆すべきは、DIN規格のを制定しているドイツ規格協会の取り組みです。着目していただきたいのは、ドイツ規格協会(DINの制定機関)の取り組みです。誰もが規格作りに関われるような仕組み、ドイツの規格を国際標準に押し上げるための戦略的な計画など、日本の企業や組織がこれから参考にできる点がいくつもあります。

そして積極的に標準化を進めていくことで、規格制定に関与した人や企業は主導権を握ることができます。こうした標準化のメリットを社会に還元するためには、何よりもまずそれを広く知っていただくことが重要です。

そして標準化を積極的に推進していくことで、規格の制定に携わった人や企業が裁量を大きく発揮できます。こうした標準化における有益な要素を社会貢献へと昇華させるためには、何よりもまずそれを広く知っていただくことが重要です。標準化を専門とする当事務所は、皆様の標準化戦略を一からお手伝いをさせていただきます。


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