【弁理士監修】IECとは?ISO・JISとの関係性についてわかりやすく解説

標準化を目的として、世界規模でさまざまな規格が制定されています。たくさんのモノや技術に溢れている現在においては、モノや技術のやりとりを円滑に行うために、規格も分野ごとに細分化されています。

この記事では、電気をはじめとしたテクノロジーに関する規格「IEC」について、例を挙げながら解説します。また「IEC」を中心として、関連する重要な規格であるISO・JISとその関係性ついても紹介します!

当サイト監修者:日本知財標準事務所 所長 弁理士 齋藤 拓也 1990年株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、金融・産業・科学技術計算システム開発に従事、2003年正林国際特許商標事務所に入所。17年間で250社以上のスタートアップ・中小企業の知財活用によるバリューアップ支援を経験。現在は、大企業の新規事業開発サポートや海外企業とのクロスボーダー 案件を含む特許ライセンス・売買等特許活用業務等に携わる。

IECとは

IECとは、International Electrotechnical Commissionの頭文字を取った略称であり、国際電気標準会議のことを指します。電気・電子・通信などの分野で、規格などの標準化・規格統一を推進する国際機関です。

規格のなかでも分類がなされており、例えば工業製品の場合はISO規格の専門となりますが、電気・電子・通信の場合はIEC規格の専門となっています。

1987年以降、上記の分野における規格や測定方法の国際的な規格を制定しています。日本のJIS規格(日本産業規格)の一部には、このIECの規格に従っているものもあります。

IEC規格は、IECに参加するために自国から委任された技術専門家の豊富な知識に基づいた規格であり、もっとも重要な国際規格のうちのひとつです。IECの国際規格は、品質とリスク管理に不可欠です。

多くの国からの専門家の国際的な合意に基づいて、IEC規格が定められています。IECによって定められた規準を満たすことにより、電気や電子機器およびシステムの設計・製造・設置・テスト・認証などの段階で使用される指示やガイドラインをより強固なものとします。

IECのマーク

IECの沿革

IECは、1906年に13ヶ国により発足しました。発足にあたり、「電気及び電子の技術分野における標準化のすべての問題及び規格適合性評価のような関連事項に関する国際協力を促進し、これによって国際理解を促進すること」という目標を掲げました。

正会員と準会員を合わせた86もの国々が参加しています。1953年より、日本も加盟しています。登録されている規格数は7,725規格にものぼります。規格作成委員会は、104の専門委員会(Technical Committee)と100の分科委員会(Sub-Committee)から構成されています。

ISO・JIS規格について

先ほどのIECの説明で登場した、ISO・JISの2項目について紹介します。

ISO(International Organization for Standardization)とは、国際標準化機構のことを指します。工業や科学技術に関する規格を策定する国際機関であり、各国の標準化団体で構成されいる組織です。1947年に発足し、日本は1952年に加入しました。この機関により標準化された規格の名称は「ISO」で始まるため、「ISO規格」とも呼ばれています。

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JISは、日本産業規格(Japanese Industrial Standard)のことを指します。日本における製品、データ、サービスなどに関する技術に定められた規格です。認証を取得した製品等には、 JISマークの表示が許可されます。規格のなかでは、産業カテゴリーごとにAからXまで分類されています。JIS規格のなかには、IECが基準となって規格が定められたものもあります。

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分類について

7,000項目を超えるIEC規格は、規格番号によって分類されています。規格番号は、原則として「IEC」で始まり、その後ろに番号・発行年が付記されます。

ひとつの規格が複数のパートに分かれる場合は、番号に続けてハイフン、枝番が表示されます。1997年に番号体系が変わり、それ以前に制定されていた規格の番号は、以前の番号に60000を加えたものに変更されました。

IEC規格の例

数多くあるIEC規格のうち、一部を例に挙げて規格番号とともに紹介します。

振動試験

振動試験とは、電子部品・機器など製品の機能や性能・信頼性など、品質を評価する試験です。輸送中または使用中に受けるさまざまな振動を模擬し、その振動に耐え得るかどうかを確認する試験。

衝撃試験

衝撃試験とは金属材料試験のひとつ。試験片や材料に急速に衝撃を与えて、破壊に要したエネルギーの大きさ、破面状態、亀裂の進展状況などを評価する試験です。衝撃力に対する材料の靭性や脆性を判定するために用いられる試験です。

塩水噴霧試験

塩水噴霧試験とは、塩水の噴霧中に試験片を一定時間暴露させ、塩分による腐食(耐食性)を評価する試験です。装置や部品などの金属は、沿岸地区や屋外で雨にさらされるとサビが発生(腐食)することが多々あるためです。

IEC規格の制定手順

IEC規格は通常、以下の図の通りに6つの段階を踏んで作成されます。新作業項目の提案が承認された後、3年以内に国際規格の最終案がまとめられることとなっています。

(1)新業務項目(NP)の提案
各国加盟機関などが新たな規格の策定・現行規格の改定を他の加盟機関へ周知し、提案します。

(2)作業原案(WD)の作成
提案の承認後、作業原案の専門家を協議して任命します。

(3)委員会原案(CD)の作成

(4)国際規格原案(CDV)の照会及び策定
全てのメンバー国が投票に参加したうえで、投票が行われます。

(5)最終国際規格案(FDIS)の策定
承認された場合、国際規格として成立が認められます。

製造者におけるメリット

IEC規格に則った製品は、国際的に認証を受けているため、顧客にとっての信用度が高く、安心感を得ることができます。これに加えて、IEC規格と適合性評価システムによって、新しい市場へのアクセスがしやすくなります。

IEC規格に則り各国の要件を満たすことで、技術の相互運用性を可能にする共通のプラットフォームを活用することができます。これらによって、世界中の多くの市場に急速に参入することができます。

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業界としてのメリット

IEC規格に基づいた製品等の場合、独自で標準化を構築する必要がないため、より早く技術仕様を確立することができます。

さらに、既存のIEC規格に適合するだけでなく、新たなIEC国際規格をつくり出すことも可能です。また、IEC国際規格と適合性評価システムは、世界貿易機関(WTO)によって定められている技術的障壁の回避においても役立ちます。

まとめ

以上、IEC規格について紹介しました。IECは、多岐にわたる種類の規格によって電気・電子・通信などの分野における標準化を支えている組織です。IECは、製造者をはじめとして、多方面にメリットをもたらす規格といえます。

また、JISだけでなくさまざまな規格とも深く関係している、重要な規格です。標準化を語るうえで、これらの規格は要チェックです!


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