「JSA(日本規格協会)」とは?規格開発や標準化の取り組みについて解説

JIS(日本産業規格)は日本で最もなじみ深い規格です。JISマークを目にしたことがある人も多いかと思います。この規格の制定に深く関わっているのがJSA(日本規格協会)です。誕生から70年以上もの間、我が国の規格開発を牽引しています。

この記事ではJSAが日ごろどのような活動に従事しているのか、さらには近年のJSAによる新たな取り組みも交えて解説します。

当サイト監修者:日本知財標準事務所 所長 弁理士 齋藤 拓也 1990年株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、金融・産業・科学技術計算システム開発に従事、2003年正林国際特許商標事務所に入所。17年間で250社以上のスタートアップ・中小企業の知財活用によるバリューアップ支援を経験。現在は、大企業の新規事業開発サポートや海外企業とのクロスボーダー 案件を含む特許ライセンス・売買等特許活用業務等に携わる。

JSAの基本情報

JSA(Japanese Standards Association)日本の「規格」全般を網羅する機関であり、設立は1945年です。立ち上げより長らく経済産業省の管轄に属していましたが、2012年に一般財団法人に移行しました。

JSAの理念は「標準化および管理技術に関して、その開発、普及および啓発などを図り、もって社会経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与する」ことです(参考:JSAグループHP)。規格の開発にとどまらず、標準化がいかに重要であるかを提唱し、そこから得られる利益を社会に還元していくという役割も担っています。

事業内容1. 規格開発

JSAの事業は大きく2種類に分けられます。「規格開発」と「標準化普及」です。中でも群を抜いて有名な活動は日本産業規格(JIS)の開発でしょう。JISとは製品、データ、サービス等の標準化を図るために制定された規格のことで、合格した製品等にはJISマークが付けられます。

画像参照:JISマークhttps://www.jisc.go.jp/newjis/newjismknews.html

JISの制定は、まず国や産業界の関係者による要望によって開始されます。その申し出に沿って業界団体等がJSAと連携して規格開発を進めていきます。作成された原案は日本産業標準調査会(JISC)で審議にかけられ、そこで規格の必要性が認められれば晴れてJISとして制定されます。

この中でJSAが担っているのは原案作成から審議会への提案までのプロセスです。また、制定後も規格が有効に活用されるべく支援をしています。

さらに近年、より速やかな規格制定を実現するために新たなプロセスが誕生しました。2019年に施行された産業標準化法(通称「新JIS法」)により、「認定機関*」から提出された規格案についてはJISCの審議を飛ばして制定ができるようになりました。現時点でJSAは国内唯一の「認定機関」という立ち位置を担っています。

*認定機関:認定産業標準作成機関の略。標準化にまつわる専門的な知識と能力を備えていると認定された民間機関。

このように、JSAはJIS開発に関連する業務をを総合的に受け持っているのです。

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事業内容2. 標準化普及

標準化の普及活動も事業の根幹を支えるもう一つの重要な事業です。各種セミナーや説明会の開催を通して標準化の重要性を発信しています。また「品質管理検定(QC検定)」を主催し、品質管理に関する知識の定着を図っています。

進化するJSA

日本における規格開発と標準化を長らく牽引してきたJSAですが、実のところその機能はJISの原案作りと提案に限られていました。肝心の審議や制定の部分はそれぞれ経済産業省や経済産業大臣が主導して行っています。

一方、ドイツやイギリスでは審議委員会を開く際、規格協会が自ら主導することが普通です。国家規格を制定するプロセスに政府が官庁が介入することはありません。

JSAでは現在の国際標準化を主導しているこれらの国に追随できるよう、新たな計画を始動させています。

JSA規格

1つ目はJSA規格(日本規格協会規格)の創設です。これは民間機関としてJSAが民間規格を発行することを意味します。

JSA規格は、サービスに関する規格や従来の制度では適用しきれない規格を産み出したいというニーズの高騰を受けて、2017年に民間規格として創設されました。すでに「温度管理保冷配送サービス」に関するもの等複数の実績を築いています。

この規格の特徴は、民間規格であるにもかかわらず国際規格や国家規格に匹敵する仕組みを有していることです。JSA規格では利害関係者のコンセンサス(合意形成)を重視した開発プロセスが設けられており、JSA規格の水準の高さを国際的にアピールすることができます。

それと同時にJSA規格として認証されていることが裏付けとなり、将来的には国家規格、さらには国際規格として定められるにあたって有利に働くことが予想されます。

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また合意形成のプロセスに多くの人が関わるため、その規格が広い認知を得られるというメリットもあります。これまで規格になることが難しかった技術やサービスが普及したり、また企業の宣伝に活用されることが期待されています。

JSAは高い精度の民間規格を独自に据えることで、国際標準化における大きな流れに準ずる構えです。

JSAグループ

2つ目の取り組みは体制の刷新です。2019年JSAは「JSAグループ」に改組し、3つの組織に分割されました。中心事業である規格開発や標準化普及を行う「日本規格協会」、主に出版を担当する「日本規格協会ソリューションズ」、規格に関連した資格の登録を行う「日本要員認証協会」がそれぞれ役割を分担しています。これにより業務の効率化やさらなる専門性の向上が期待できます。

まとめ:規格制定から標準化へ

規格を作るだけの時代は終わり、今後は標準化を常に意識した規格開発がよりいっそう求められるようになります。JSAは規格の制定にとどまらない、「標準化のナショナルセンター」に生まれ変わろうとしているのです。

標準化戦略の推進には、JSA規格の制定をはじめ、ほかにも様々な方法があります。企業の標準化戦略においてどの道を選ぶのがベストなのかをJIPSはご提案させていただきます。

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