【弁理士監修】義務化されたHACCP(ハサップ)とは?認証って必要なの?

2020年にHACCP(ハサップ)の義務化が開始されました。そして1年の移行期間を経た2021年6月からは完全に義務化される見通しです。ですが具体的にどう対応すればいいかわからないと不安に思っている方もいるのではないでしょうか。

またHACCPを導入したらHACCP認証を取得しなければいけないのかと悩んでいる方も多いかと思います。今回はそのような疑問に答えるべく、HACCPの基礎知識から義務化の詳細、そしてHACCP認証の種類と取得するメリットについて解説していきます。

HACCP(ハサップ)とは?

HACCPは「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の頭文字を取ったもので、食品製造における安全を確保するための衛生管理手法を指します。

その名の通り、製造過程において「危害分析」(HA)を行い「重要管理点」(CCP)を設定することがHACCPです。HACCPは食品の衛生管理における理念を表したものということもできます。

HACCPの誕生は1960年代にさかのぼります。もとはアメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙食を安全に製造するための手法として開発したものでした。今日では世界各国に普及しており、EUでは2006年から、アメリカでは2016年からHACCPの導入が義務付けられています。

HACCP導入のメリット

HACCPを導入するメリットの一つは、より正確かつ迅速な衛生管理が可能になることです。これまでの製品管理は出来上がった製品から一部を無作為に抜き出して検査する「抜取検査」が主流でした。

この方法ではすべての製品を検査しなくて済むという利点がありますが、逆にひとつでも検査に引っかかってしまうとすべての製品を廃棄しなければならなくなります。さらに検査をすり抜けてしまう不適格製品が出てくる可能性もゼロではありません。

一方、HACCPでは仕入れから出荷までのすべてのポイントで検査が行われます。製造工程が常に監視されているため早い段階で問題を防ぐことができます。

万が一出荷した製品に欠陥が見つかった場合でも、どの段階で問題があったのかをさかのぼって特定することができます。HACCPによる危機管理は従来の手法よりも効率的かつ効果的であるといえます。

迅速な問題解決、事故やクレームの減少といった実務上のメリットもさることながら、HACCPの導入は従業員の意識改善にも影響を与えています。

2014年に厚生労働省が実施した「HACCPの普及・導入支援のための実態調査について」によると、HACCPを導入することで社員のの衛生管理に対する意識が向上したという回答が多く見られました。

さらには企業が衛生管理に対する姿勢を表明することで、取引先の企業そして消費者の信頼が向上することも見込まれます。

HACCPの7原則12手順

HACCPを導入する際の指標となるのが。それが「HACCPの7原則12手順」です。コーデックス委員会(Codex Committee on Food Labeling)*によって定められたこのガイドラインは、食品の衛生管理を構築するための具体的な方法が示されています。特に重要なのは手順6から12に示された7つの原則です。手順1から5はこの原則を設定するための準備にあたります。

*WHO(世界健康機関)とFAO(国連食糧農業機関)が合同で設立した食品の安全性に関する国際機関

HACCP

HACCPが義務化されるとどうなる?

2021年6月からついにHACCPが義務化されます。2018年に改正された食品衛生法に基づき、食品の製造、加工、販売に関わるすべての事業者に、HACCPに沿った衛生管理をすることが求めらるようになります。

※以下の事業者は今回の義務化の対象外です

  • 食品の輸入業
  • 常温での食品の貯蔵、運搬業
  • 常温で長期保存できる包装食品の販売業
  • 容器包装の輸入、販売業

詳しくは厚生労働省のHPを参照してください。

どのような対応が求められるかは事業者の規模によって違います。大まかに分けると次のようになります。

大規模事業者→ HACCPに基づく衛生管理

従業員数が50名を超える事業者には「HACCPに基づく衛生管理」が要求されます。屠畜場や食鳥処理場も対象に含まれます。これに当てはまる事業者はHACCPの7原則に基づいて計画を作成し、管理しなければなりません。

小規模事業者→HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

従業員数が50名未満の小規模事業者には「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が要求されます。各業界団体が作成した手引書に基づく、簡略化した形での衛生管理が許可されています。

HACCP認証は義務ではない

HACCPの義務化に伴いよく耳にするのが「HACCP認証」というワードです。取引先の企業などからHACCP認証を取ることを勧められた経験がある、あるいはHACCPが義務化されれば認証を取らなければならないと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から言うと、今回の法改正ではHACCP認証の取得は義務付けられていません。義務化されるのはあくまでHACCPの手法を取り入れるという点だけです。

「認証」とはある一定の規格や基準に適合していることを第三者が証明することを意味します。すなわちHACCP認証とは、事業者がHACCPに基づいた衛生管理を行っていることを第三者機関が審査し、認める仕組みのことです。いわば「お墨付き」を得ることだといえます。

現時点ではHACCP認証は任意のものであり、絶対に取得する必要があるというわけではありません。ですが、認証をHACCPを導入する際のガイドのように活用することもひとつの方法です。

なおHACCP認証を取得するための期間は、準備段階の長さや製品の種類によって異なるため一概には断定できません。いずれの場合も余裕をもってスケジュールを組むことが重要となるでしょう。

国内におけるHACCP認証

国が国内の事業者向けに設けた認証システムとして「地域(自治体)HACCP」や「業界団体HACCP」があります。これらの認証は国民の健康を保護する目的で定められた食品安全基本法の理念をベースとしています。

地域HACCP

地域HACCPは地方自治体が主に中小企業に対して与える認証です。認証の基準は都道府県や市区町村が独自に定めていて、比較的容易に取得することができます。

例えば東京都では「東京都食品衛生自主管理認証制度」が設けられています。都内の飲食店や食品工場を対象に、事業者が定めた衛生管理方法を評価して認証を与えるものです(東京都の制度はHACCP義務化に伴い終了することが決定しています)。

(参照:東京都福祉保健局HP

また北海道では「北海道HACCP自主衛生管理認証制度」が設けられています。道内の食品製造・加工施設、スーパーマーケット等のバックヤードを有する施設、給食センター等の大量調理施設を対象に事業者が自ら行う衛生管理方法について、申請により認証を与えるものです。道が公認した民間の衛生コンサルタント会社が評価し、認証審査会が審査を行います。

(参照:北海道HP

業界団体HACCP

食品に関係する業界団体によって審査が行われるのが業界団体HACCPです。食肉加工や惣菜、菓子のように専門ごとに細分化されています。そのため適用範囲が特定の業界や業種に限られることに注意が必要です。

全国菓子工業組合連合会は、菓子製品を対象にした製造過程の管理基準である「菓子製品の高度化基準」を定めています。また連合会のホームページでは、HACCP義務化にあわせて、厚生労働省の助言を受けて作成された「HACCP の考え方を取り入れた菓子製造業における衛生管理計画作成の手引書」を公開しています。

(参照:「HACCP制度化について」全国菓子工業組合連合会HP

また米飯を提供する事業者を取りまとめる日本炊飯協会も、衛生管理の向上を目的としてHACCPの認定に取り組んでいます。認定と更新を事業として行うとともに、承認前のアドバイスも無料で行っています。おにぎり等の米飯加工品がHACCP認定を受けると、独自の認定マークを付けることが認められます。

(参照:「日本炊飯協会のHACCP認定事業」日本炊飯協会HP

上記以外にもさまざまな業界団体が独自の仕組みを定めています。ただし、業界団体HACCPの中には規格や基準を示すだけで認証を行っていないものもあるので注意が必要です。さらに言えば、地域HACCPや業界団体HACCPの課題として、対象となる範囲が限られていること、それぞれ独自の規格や基準を設けているため統一性がないことが挙げられます。

しばしば地域HACCP、業界団体HACCPと並んで、厚生労働省の「総合衛生管理製造過程」が認証のひとつとして紹介されている場合があります。

しかし厳密にいえばこれは認証ではありません。総合衛生管理製造過程は6つの食品(乳、乳製品、清涼飲料水、食肉製品、魚肉練り製品、レトルト食品)を対象に、それらの製造・加工・衛生管理方法が基準を満たしていることを大臣が個別に確認するというものです。HACCPの義務化によって2020年6月をもって廃止されました。

(参照:厚生労働省HP) 

HACCP認証を取得するとしたら?

今回のHACCP義務化では認証の取得までは求められていません。ですが将来のことを見据えてHACCP認証を取得することは決して無駄なことではありません。そして実際に取得するのであれば、国内だけでなく国際的に通用する認証を目指したいところです。

HACCP認証にはさまざまな種類があり、取得の難易度もそれぞれ異なります。そこでここからはどの認証を取得すればいいのか、どういったステップで取得するのかを簡単に紹介します。

国際的な認証スキーム

先ほど紹介した地域HACCPや業界団体HACCP、そして総合衛生管理製造過程は食品安全基本法や食品衛生法をベースとしているものです。当然、これらの影響力は日本国内に限られます。

一方で世界には食品安全に関する民間認証が数多く存在します。民間組織が制定した認証は一国の基準に縛られることがありません。国際規格は世界的に通用する制度なのです。

国際規格の中で最もレベルが高いのは、Global Food Safety Initiative(GFSI、世界食品安全イニシアチブ)の承認を受けたものです。GFSIは世界各国の400余りの食品事業者が参加する食品安全を推進するための機関です。

GFSIは食品安全マネジメント、GMP(適正製造規範)、そしてHACCPという3つの要素を満たしている規格や認証スキームを独自に承認しています。そして承認を受けたものは一般的にGFSIのベンチマーク規格と呼ばれています。

2021年現在、GFSIベンチマーク規格は9つあります。これらの規格は原材料の生産から製造、そして消費者のもとに届くまでのフードチェーン全体を包括的にカバーしていることがポイントです。

日本で最もポピュラーなのは「FSSC 22000」でしょう。FSSC 22000は、HACCPを組み込んだマネジメントシステムである「ISO 22000」を発展させたものです。他にも我が国で普及しているスキームには、食品安全だけでなく製品の品質も認証の対象となる「SQF」や持続可能な農産物の生産を認証する「GLOBALG.A.P」などがあります。

こうしたレベルの高い規格にいきなり挑戦するのは困難です。しかし、多くGFSIベンチマーク規格にはその前段階となる比較的難易度の低い規格が用意されています。まずはこれらの取得を目指すことから始めるのが得策でしょう。

たとえば最終的にFSSC 22000の取得を目指すとすれば、まずそのベースとなっているISO 22000を目標とするのが良いでしょう。

FSSC 22000と比べればISO 22000の認証取得はそれほど難しくはありません。さらに、ISO 22000取得の準備として日本品質保証機構が独自に制定した「ISO 9001-HACCP」を取得するという方法もあります。認証を得る際にはよく計画を立てて段階を踏むことがセオリーです。

3-2 日本発の認証スキーム「JSF-C」

ここまで紹介してきた国際規格はすべて日本国外の機関により制定されたものです。こうした規格の認証を得ることは世界に向けて食品の安全性をアピールすることにつながります。

しかし国際規格の取得、更新のためには多額のコストがかかるのも事実です。その上、日本独自の製法で作られる食品が海外の規格に適合せず認証を得られないというケースに発展するかもしれません。

このような理由から、自国で規格を制定することが重要となっています。自前のスキームを持つことで国内の状況に合わせた自分たちに有利なルールメイキングをすることも可能になるのです。

日本発の国際的な認証スキームを構築するために2016年に設立されたのが一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)です。JFSMは日本の制度や実状に即した「JFS規格」を開発しました。

JFS規格には3つのレベルがあります。なかでも最高レベルの「JFS-C」はHACCPの実施だけでなくフードチェーン全体を想定したマネジメントシステムの要素も含んでいます。JFS-Cは国際的な規格として、将来的にGFSIのベンチマーク規格に認定されることを目指しています。

(参照:食品安全マネジメント協会HP

まとめ:より高い安全性へのステップアップに向けて

ここまでHACCPについて詳しく解説してきました。今後、食品事業者はHACCPの概念を取り入れた衛生管理に取り組むことが義務となります。しっかりと対応することが社会全体のためになるのです。

これに関連してHACCP認証についても詳しく紹介しました。認証取得は義務付けられていませんが、この機会に興味を持たれた方は取得を検討してみてはいかがでしょうか。その際、自分たちがどの認証をどのようなステップ取ればいいのかを吟味する必要があります。HACCP認証に関することはどんなことでも我々にご相談ください。